腸内フローラとは?腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の効果をご紹介
人の腸には腸内フローラと呼ばれる100兆個以上の腸内細菌が生息しており、腸内細菌により人の健康は保たれています。
中でも近年は、腸内環境を整える短鎖脂肪酸が注目を集めていています。
短鎖脂肪酸とはなんでしょうか。
単語としてはよく聞く「腸内フローラ」や「短鎖脂肪酸」についてまとめました。
腸内フローラとは
人の腸には500~1,000種類、数にして100兆個以上の腸内細菌が生息していると言われています。
これらの細菌群を総称して腸内フローラと呼んでいます。
フローラは花畑の意味。
腸内に生息する数々の腸内細菌を、色とりどりの花に見立てて腸内フローラと呼ぶのです。
腸内細菌の役割
腸内細菌は有名な善玉菌や悪玉菌、さらに日和見菌で成り立っています。
善玉菌
善玉菌は食べ物に含まれる消化のしづらい食物繊維やオリゴ糖などを発酵する性質があります。
善玉菌により発酵した食物繊維は、体内の有用なエネルギー源(短鎖脂肪酸といいます)として活用されます。
※短鎖脂肪酸については下にてご説明しています。
悪玉菌
一方で、悪玉菌は動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞、下肢の動脈閉塞など命に関わる病気を起こしやすくなる物質です。
悪玉菌を代表するものは悪玉コレステロール。
泥や粘土をイメージください。
悪玉コレステロールは血液に溶け込んでいますが、血管の壁に徐々に付着していきます。
少量であれば血液で流れるので問題はないですが、一定数堆積してしまうと血管が徐々にふさがっていきます。
その結果動脈硬化が進行し、日常生活に支障をきたす病気を起こしやすくなります。
日和見菌
日和見菌は、善玉菌でも悪玉菌でもない菌です。
童話のこうもりのように、
◆腸内に善玉菌が多ければ善玉菌と同様の働きをし、
◆悪玉菌が多ければ悪玉菌と同様の働きをする
という流動的な性質をもっています。
腸内では善玉菌と悪玉菌の陣取り合戦が日々行われており、健康な人の腸内は善玉菌の割合が多いと言われています。
逆に悪玉菌が増えると、日和見菌も悪玉菌の味方をしてしまうため、さまざまな健康トラブルを引き起こしやすくなります。
なお、腸内フローラは、
善玉菌:悪玉菌:日和見菌の割合が2:1:7
となるのが理想と言われています。
短鎖脂肪酸とは?
腸内細菌の中でも注目されているのが、ビフィズス菌などの善玉菌がつくる短鎖脂肪酸。
上の善玉菌の項目でもご紹介しましたが、
短鎖脂肪酸は善玉菌の一つであるビフィズス菌などにより、食物繊維やオリゴ糖を発酵して作られます。
作られた短鎖脂肪酸は大腸から体内に吸収され、生きる上で欠かせないエネルギー源として利用されます。
また、短鎖脂肪酸は弱酸性の酸です。
腸内に短鎖脂肪酸が増えることで弱酸性になり、 悪玉菌の出す酵素の活性が抑えられます。
その結果、
◆発がん性物質である二次胆汁酸や有害な腐敗産物ができにくくなったり、
◆悪玉菌の増殖を防いだり、
◆腸内の炎症を抑える
といった作用があります。
特に酪酸(らくさん)、酢酸(さくさん) 、プロピオン酸、L乳酸の4種類は体の健康を保つために欠かせない短鎖脂肪酸といわれています。
酪酸
酪酸は大腸炎など内臓の炎症を抑えることができる物質です。
食物繊維の多い食事を取ると、腸内細菌のうちの善玉菌が活動し、酪酸が作られます。
大腸炎をもつマウスに酪酸を投与したところ、制御性T細胞という炎症抑制作用のある成分が増え、大腸炎が抑制されたという論文発表もあります。
酢酸
酢酸には悪玉菌を退治する殺菌作用や、増殖を抑える静菌作用があります。
腸内細菌により酢酸が増えれば、体が腸を起点に健康になります。
プロピオン酸
プロピオン酸菌は整腸作用、コレステロール低減、ビタミンの生産など、健康に効果的な働きをします。
プロピオン酸は意外なところではチーズの製造に欠かせない成分です。
チーズといえば、チーズアイと呼ばれる大きな穴のあいたチーズをイメージしますよね。
この穴をあける働きがあるのがプロピオン酸です。
腸内細菌ですが、日常の食品に欠かせない成分でもあるのです。
L-乳酸
L-乳酸は、酸味が好まれる食品や飲料に添加物として使用されています。
また、L-乳酸も悪玉菌の繁殖を抑える作用があり、腸のぜん動運動を活発にするためお通じによいと言われています。
まとめ
腸内環境は指紋のように一人一人異なると言われています。
とはいえ、健康に過ごすためには腸内環境を改善することが欠かせません。
短鎖脂肪酸を増やすために善玉菌を積極的に摂取してはいかがでしょうか。